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Niwata Collection

FUJIPET

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私が5歳の時、1957年に発売されたフジペットです。多くの子供たちが憧れたカメラでした。
シンメトリーなデザイン。上に飛び出した、丸くて大きなファインダー。
レンズを取り巻く三角のレバー。
一目見たら忘れられないデザインです。
手に入れた時の状態は、故障も見当たらず、フィルムを入れれば撮影できる感じです。
レンズは単玉F11、
外から見る限り、メニスカスのようです。
F値が暗い割にレンズが大きいのは、色収差を減らすために、可変絞りの前に中間絞りを一枚入れてF11にしてあるからです。

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手に入れるまで知りませんでしたが、フードが組み込んであります。
これは縮めた状態です。レンズの下の赤いスイッチはバルブの切り替えです。
Bと50分の1しかありません。子供がBで撮ることがあったのでしょうか。

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フードを引き出した状態です。写真では見えませんが、鏡胴下部にフラッシュ接点があります。レバーの下には11,16,22とF値が見えます。

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円錐形のファインダーの右がアクセサリーシュー。
左がフィルムワインダー。
普通と逆の配置です。三角レバーは左がシャッターセット、
右がシャッターそのもの。見かけによらず、シャッターは軽い動作です。
アクセサリーシューには傷もなく、フラッシュを装着した形跡はありません。
先ほどのバルブもそうですが、子供がフラッシュを焚いたとは思えません。

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裏蓋を開けた状態です。フィルム押さえはシンプルな
板バネ一枚です。
フィルム面はかなり湾曲しています。左右の湾曲収差は補正されますが、スクウェアなサイズですから上下が心配です。

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単純な内部構造が見て取れます。可変絞りはL型プレート2枚によります。
動きは正確でスムーズです。
裏蓋にはフィルムの箱の絵が貼ってあります。ご丁寧にも
ネオパンSからSSSまでの文字が描いてあります。この頃からSSSがあったのですね。懐かしいですね。
その下の丸窓はフィルムのカウンター窓です。
フィルムに数字の書いた裏紙が付いていて、この窓から見えたわけです。
ずっと35ミリボルタ版とばかり思っていましたが、実は6×6版だったのですね。

長年探してきたカメラを手にして、今、思います。
技術の進歩はもちろんの事、時代と社会の変化そのものを……。
還暦を過ぎてしまいましたが、あの頃の夢を私は実現したのでしょうか。
つきなみな言い方ですが、もうひと頑張りしよう。
私を必要とする人たちのために仕事に打ち込もう。
そんな気持ちにしてくれました。



フジペット入手記

以下は2000年(平成12年)9月時点、旧ホームページ上の文章です。

大袈裟なと言われるかもしれないけれど、40数年間捜し求めたカメラをやっと見つけました。
名前はフジペット。
事務所に届いてさっそく職員に見せたら「何、その汚いのは」と言う感じでしたが、私にとっては大事な「お宝」なのです。
撮影も一応はしてみますが、分解してメカニズムを確かめる作業が楽しいのです。もちろんワインかビールを飲みながらの作業ですが。
それにしてもさすがインターネット。
今年〔平成12年〕の8月5日にカメラ関係の掲示板3ヶ所に「求む情報」をアップしていたら何と9月8日には入手できました。
10年以上前、まだインターネットは無くてパソコン通信の頃も一度探したのですが手に入らないどころか、情報の1つも来ませんでした。
何しろ会社ごとに、クローズされた世界でしたからね、パソコン通信は。
だから今回何通ものメールが来て、改めてインターネット情報のオープンさ、伝播のスピードと広がり、実用性を痛感しました。
それと忘れていけないのは世の中には親切な人がいると言う事です。
掲示板を見て持ち主に情報を仲介して下さった大阪の●●さん、どうもありがとうございました。

さてフジペットとはどんなカメラかと言うと。
売り出されたのは1957年、日本もやっと落ち着き始めた昭和32年のことです。当時の価格は1980円。F11のガラス製単焦点レンズ1枚きり。シャッター速度50分の1秒とBの2種類。フィルムサイズ6×6版。当たり前だけど何とも古臭くおもちゃみたいなスペックです。
不思議なことに焦点距離はレンズに記載されていないし公表もされていません。
スペックの事など子供に必要ないと言えば、それはそうですが。
しかし考えてみれば、絞り、シャッターを始めとするカメラの基本がここにはあります。一枚ずつ丁寧に「はい、チーズ」と写す感じですね。
今回実物を手にして初めて知ったことですが、ずっと飾りだと思っていたレンズの周りの三角形のものは、シャッターのセットレバーとシャッターそのものでした。納得。
フジと言えばフィルムやデジカメでおなじみの、今や世界有数の巨大メーカーですが昔はこんなに素朴なカメラを作っていたのです。

ところで、なぜ私が苦労してフジペットを探したかです。
しかも周りの友達にあきれ笑われながら。
まったく個人的な思い出なのですが、小学校に上がる前、近所に裕福な家があって、そこのタカちゃんと言う同じ年の子が、おもちゃのカメラを持っていたのです。
エボニィ35デラックス、デパートで確か500円のものでした。
(このページのRich-Rayとほぼ同じです)
晴れた日しか撮れないのですが、条件が良ければ結構良く写って、友達を撮影しては見せてくれていました。
その頃、このフジペットが世に出たわけです。我々が5歳の時です。
表現としては変ですが「子供向けの本格カメラ」として発売されました。
だからフジペットは「おもちゃ」ではないのです。
さすがのタカちゃんも1980円のフジペットは買ってもらえなかったのです。
5円あればお菓子がとりまぜて買える頃ですからね。
その後何年にもわたって販売されていたので、カメラ屋のショーウィンドウの中に、特徴である大きなファインダーを乗っけて輝いていたのを覚えている人もいるでしょう。
あるいは「少年画報」、「ぼくら」、「冒険王」、「少年」などのような月刊雑誌の懸賞の一等賞がこのカメラでした。
欲しくてたまらず、せっせと応募したのは私だけではないでしょう。
もちろん子供の頃「欲しかった物」は他にもあるのですが、それらもろもろの象徴として、このフジペットがずっと私の脳細胞に焼き込まれていたのです。

私がフジペットの事でメールのやり取りに忙しい丁度その頃、小6の息子がインターネット通販でデジカメを手に入れました。
パーパスと言うメーカー製の6000円くらいのものですが、これがなかなか使いやすく良く写るのです。
自作のプラモや「じじばば」など、撮りまくって自分のホームページまで作ってしまいました。
昔のカメラ同様、ジャンル分けが今のデジカメにもあって、子供向けをパーパスのほかにバンダイとかトミーと言うようなメーカーが作っています。
息子のを見て、大したものだと思うのは、本当に今のデジカメは子供用でもバカにできない性能だと言うことです。
機械が好きで、中学の頃から戦後のカメラを中心に手当たり次第に集めて来ましたが、今の私は、フジペットが見つかったことで何か落ち着いてしまいました。
その上息子にデジカメで先を越されてしまってはねぇー。
ガラクタカメラ収集もこれで終わりにして、本格的にデジカメ始めようかなどとも考えます。
そしたらバンバンこのホームページにアップしますね。              以上